デシベル計

バイオリンの音量は大きい?マンションでは練習できない?

マンションでバイオリンを弾いても大丈夫?

集合住宅に住んでいると、習うかどうかを決める前にどうしても「音」が気になります。絶対大丈夫!とは宣言できませんが、ピアノOKの物件ならバイオリンは問題ないと言えるでしょう。

ここではバイオリンの音の特徴と簡単にできる防音方法を紹介します。

「バイオリンの音は大きいですか?」

一般に、バイオリンの音が大きいかどうかが気になるのは、バイオリンの音が「うるさい」かどうかを気にするときでしょう。しかし、音の感じ方には個人差があるため、バイオリンの音を第三者が「大きくない」「うるさくない」等と評価するのは困難です。

ある人が「バイオリンの音は気になるほどでない」と言ったとしても、別の人は同じ音量を「音が大きい、うるさい」と感じるかもしれません。同じ音量でも、綺麗なバイオリンの音は気にならないのに、雑音交じりだったり音程が狂っていたら煩わしいかもしれません。

オーケストラの演奏にはたくさんの楽器が参加していますが、これを「うるさい」と表現することはほぼありません。環境や条件によっても音量が大きいかどうか、うるさいかどうかの判断が異なります。

弾き手によっても音量や音質は違います。例えばプロと初心者を比べたら、たとえ同じ楽器を使ってもプロが出す音は大きく響きますが、初心者ならプロほど響かないでしょう。でも、プロの音には聴き惚れるかもれませんが、初心者の演奏は音量が小さくても煩わしく思えるかもしれません。

楽器の音量をデシベル(音量の単位)で示すことはできても、それを「うるさい」と思うかどうかは別の話です。楽器の音量が相当に出ていても、実際に伝わる音量が小さければ「うるさくない」と思えるでしょう。だから「バイオリンの音は大きいですか?」「バイオリンの音はうるさいですか?」という質問は漠然としすぎて答えられないのです。

ネットで検索すれれば楽器の音について様々な分析や評価がリストアップされますが、一般論をどれだけ読んでもしっくりこないのは「自分が知りたい条件と異なる」からではないでしょうか。

「集合住宅でバイオリンを弾けますか?」

一般に「バイオリンの音量はどのくらい?」と気になるのは、バイオリンを習い始める前に「自宅で演奏しても近所迷惑にならないか」と思案する時がほとんどです。とくに集合住宅であれば、近隣に音が伝わってしまうのではと懸念するのも無理はありません。

戸建てでも集合住宅でも、音がどれだけ外に漏れるかは、建物の構造によります。戸建てでも隙間の多い建物なら音は外に漏れますし、気密性の高い集合住宅なら音漏れは生活音と変わらないレベルになります。このため一言で「戸建てはバイオリンOK、マンションはダメ」とは言い切れません。

多くの人に想像しやすいのはピアノの音と比べることですが、ピアノとバイオリンの音の伝わり方は異なります。ピアノは、低音から高音まで幅広い音域の音が出ていますが、とくに低音は壁や柱から他の部屋にも伝わりやすい性質があります。加えて、ピアノの足は床に設置されているため、建物の構造に音が伝わりやすい条件がそろっています。

一方で、バイオリンは高音のみの楽器です。高音は耳に届きやすいので、バイオリン演奏が目の前にあると音は大きく聞こえます。しかし、低い音と比べると高い音は遠くまで届きにくく、壁などで音が遮断されやすい性質があります。このため、ピアノよりも音を遮断する工夫がしやすいとも言えます。

多くの人が防音設備のない住宅でバイオリンを練習しています。集合住宅住まいの人も当レッスンにはたくさん参加しています。最初は音を懸念する人も多いのですが、実際は懸念したほど音は気にならないことが多いようです。

加えて、初心者のうちはまだ音を大きく響かせる技術がありません。とくに低学年生が使うバイオリンのサイズは小さいのですが、一般にサイズの小さい楽器ほど音量は小さくなります。高学年生で大人サイズの楽器を使う場合でも、しばらくは、楽器のポテンシャルを最大限に引き出すほどの音は出せません。

どんな住宅でもバイオリンOK!とは言いませんが、少しの工夫でバイオリンを弾ける環境は用意できます。下記を参考に準備してみてください。

集合住宅でバイオリンを演奏する時の工夫

音大受験するなら防音室を設置することも視野に入れたほうがいいでしょう。練習時間が長く、音量もプロレベルに大きく響きくので、許容範囲を超える音を出してしまう可能性があります。

しかし未経験者が今から趣味でバイオリンを習い始めるだけなら、下のような工夫でずいぶん音漏れは防げます。

初心者に消音器は不要

練習時の音量を抑える「消音器」という小物が市販されています。ゴムの塊のような道具で弦にかぶせて使います。弦の振動を吸収することで音量を小さくします。

しかし最初から消音器をつけることは、当レッスンではお勧めしていません。最初の頃こそ「バイオリン楽しい!もっといい音出したい!」という感動を味わってほしいからです。

消音器を付けた状態とは、ピアノに例えると消音ペダルを踏みっぱなしで練習しているようなものです。音が籠るため、弾いた時の楽しさが激減します。習い始めに「バイオリンって楽しい!」と思えなかったら、練習を続けるのが苦痛になってしまうでしょう。

戸建て住まいでも集合住宅住まいでも、6週間レッスンの受講者で消音器を使うケースはありません。初心者なので、気にするほどの音量は出せないからです。

消音器の使用は禁止ではないので、どうしても気になる場合は使用して構いません。その場合、音を出す前から消音器を買いそろえてしまうより、音を出してみて気になるようなら消音器を検討することをお勧めします。

練習時間は1日10分

バイオリンの音が近所迷惑になるのではないかと懸念しているかもしれませんが、バイオリンの音が1日中続くわけではありません。むしろ練習時間は1日10分。この10分を迷惑にならない時間帯を選んで実施すればよいのです。

1日10分の練習でいいの?と疑問に思うかもしれませんが、本当に1日10分が目標です。初心者のうちは全身に無駄な力が入ってしまい10分も練習を継続できません。高学年生でも5分くらいでいったん休憩が欲しくなります。疲れて姿勢が崩れたまま練習しても上達しません。姿勢を保てる時間に集中して練習するほうが上達につながります。

短時間でも毎日続けることが上達の秘訣。1日10分の練習を効果的に行う方法は「バイオリン上達の秘訣は「質問」~これで1日10分の練習が「上達する練習」に」でも紹介しているので参考にしてください。

音質は改善します

初心者の場合、音量よりも音の質のほうが気になるかもしれません。習い始めの頃はいわゆる「『ドラえもん』に出てくる、しずかちゃんのバイオリンの音」です。雑音が多く、音程が合いません。テレビやYouTubeで見る限りバイオリンは綺麗な音の出る楽器ですが、初心者はなかなか音が綺麗になりません。

しかし、音質が悪いことは弾いている本人も気になります(しずかちゃんは気にならないようですが・・・)。音が綺麗でないと弾いていても楽しくないので、綺麗に弾きたいと思うようになります。自分の音が綺麗でないと気づくとまでも実は少し時間がかかるのですが、いったん「もっと綺麗な音で弾きたい!」と思えばそれが原動力になって、弾き方を工夫するようになります。6週間だけでも音はずいぶん変わるものです。ゼロから始めて6週間の練習の成果は「6週間バイオリン・レッスンの成果」でも実際の動画を紹介しているので参考にしてください。

雑音を失くすにはどれくらいの力加減が適切か、良い響きを持続させるには姿勢が大事、弓が曲がると音も頼りなくなる・・・等、弾いているうちに何をどう直したらいいか学んでいきます。

最初の音質が悪いのは仕方ないことですが「綺麗な音を出したい」と思って練習するうちに、音質は徐々に改善されていきます。子どもが「バイオリン弾けるようになりたい!」と努力しているのなら、少しの間だけ、習い始めの音質に家族もお付き合いしてあげてください。

バイオリンを演奏するリスのイラスト

「バイオリンをもっと身近に感じてほしい」の思いを持ったバイオリニストによる講師チーム。オンラインならではの教え方を工夫しています。日本国内だけでなく海外からもレッスン実施中。