小さな町から始まったプロジェクト

埼玉県横瀬町(よこぜまち)・・・埼玉の西部にある秩父地方の町です。ここから「横瀬町バイオリン・プロジェクト」はスタートしました。なぜ横瀬町?それは、横瀬町に新しいものを受け入れる土壌があったから。官民提携プラットフォーム「よこらぼ」のNo.67事業として認定されたことから、最初の一歩が動き出しました。
 

第一期発表会

 
 

オンラインが広げたバイオリンの輪

当初は横瀬町を含む秩父地方だけのプログラムでしたが、2022年現在、関東地方の各地から参加が可能になっています。理由のひとつは「オンライン会議の普及」です。新型コロナ感染症の影響もあり、この1~2年で企業や学校教育にオンライン会議のしくみやノウハウが普及しました。オンライン環境なら、地域に関係なくレッスンを受けられます。
 
 

「文化資本の偏り≒機会の格差」に挑む

こと文化的な資本は都市部に偏重していて、東京から2時間離れるだけで「『無い』ことがあたりまえ」になります。 とくにバイオリンなど弦楽器を扱う店や教室は、郊外にはほとんどありません。

その「あたりまえ」の環境は、地方から「選択する」という能力を奪っています。自分も周りも「あたりまえ」だと思っていれば、大人でさえそれが機会の格差であることに気づくことが難しくなります。

私たちはこの機会の格差を埋める、いえ、埋めるだけでなく積極的に機会を創造することを目指しています。

アメリカ、フランスなど先進国のみならず南米でも、バイオリンを始めとする音楽教育が地域の学力向上や貧困対策に役立てられています。公的支援や企業の協賛など運営の仕組みはそれぞれ異なりますが、未来を担う子ども達のために地域で音楽教育を支えています。

「貧困対策」というと日本ではピンとこない人も多いでしょう。でもこれを大都市と地方との格差に置き換えたらどうでしょうか。故郷の町、地元の町から活気が減っていく様を目の当たりにしている人は少なくないはずです。

バイオリンは地域格差の代表各ともいえる楽器です。同時に、目の前に現れると老若男女誰もが「わぁ!」と感動する楽器。音楽は、当事者だけでなく周囲の人たちにも喜びを与えられるものだから、私たちはバイオリンで地域格差に挑みます。

 
 

学びは技術だけじゃない

バイオリンが与えてくれるのは演奏の技術だけではありません。バイオリンを学ぶ過程で、子ども達の集中力、問題を解決する力、目的を遂行する力、そして音楽や芸術を楽しむ心も、驚くほど成長します。

たった1ヶ月練習しただけで身につけられる技術はごくわずかですが、発表会を終えた後は、子どもも保護者も「バイオリンやってよかった!」と満足感でいっぱいです。

「やってみたい」と思ったことを実際に体験して、最初の目標に到達したところで自ら「これで終わり」という選択をするのですから、後ろめたさはかけらもありません。むしろ満足感でいっぱいです。

海外では「バイオリンなど音楽教育は地域の基礎学力の向上と相関がある」という研究結果が多数報告されています。

もちろん、バイオリンを学ぶことが直接的に算数や国語の点数を引き上げるわけではありません。テストの点数をあげたいなら、学習塾のほうが近道です。バイオリンを学ぶ過程で身につけた、課題を見つけて解決する力、目標達成までのスケジュールを決めて実行する力、技術を身につけることの楽しさ・・・などの体験が、学習意欲や向上心を引き出していくからではないでしょうか。実際、多くの親子から「自信がついた」「毎日コツコツ積み上げる大切さを知った」という声が多数届いています

たくさんの音を集めて一つの音楽を作る楽しさ、今まで気づかなかった楽器ごとの音の違い、・・・バイオリンを体験して初めて知る世界は、想像以上に広くて大きい。そのことを一人でも多くの子どもに体験してほしいと願います。

 

最初のレッスンで調弦を練習