姿勢のチェックポイント~バイオリン未経験の親でも、その判断でOK

姿勢は10秒で崩れる

バイオリン初心者は10秒とたたないうちに姿勢が崩れます。普段と違う筋肉の使い方をするので、どうしても普段通りの動かし方に戻ろうとして、無意識に姿勢を崩していきます。無意識に姿勢が変わっているので、自分で気づくことはほぼ不可能です。

初心者は鏡の前に立っても鏡を見て姿勢を直すような余裕はありません。姿勢が安定するまでは大人が客観的にチェックして、崩れたところはすぐに直してあげてください。

自分では直せません、大人が直してあげてください

ここで「バイオリンやったことないから・・・」と言って手を出さないのは逆効果です。悪い姿勢が定着して上達がどんどん遅れていきます。弾く人(子ども)もバイオリンが初めてなら、サポートする人(大人)もバイオリンが初めてです。弾く人だけが練習すればいいのではなく、サポートする人も練習して「上手なサポートの仕方」を覚えていきましょう。

大人は、言葉ではなく手を出しましょう

このとき、言葉で「姿勢が崩れてるよ、直して」と言っても、弾く人は自分では直せません。客観的に観察している大人が崩れたポイントを正しい形に直してあげましょう。姿勢は無意識のうちに崩れているので「崩れている」と言われてもどこをどう直したらいいか、本人はまだわからないのです。正しい筋肉の動きを再現して「これが正しい形」と体にインプットしてあげたほうが、体が早く覚えていきます。

チェックポイントは3つ

姿勢のチェックポイントは以下の3つです。

【1】前を向く
【2】頭の頂点は常に天井を向く
【3】肩の高さ・前後の位置を揃える

バイオリンの経験の「ある・なし」に関わらず、観察していれば分かるポイントばかりです。バイオリンの経験がなくても、以下のどれか一つでも「ズレたかな?」と思うところがあれば、その判断はほぼ正しいので、自信をもって直してあげてください。

 

【1】前を向く

バイオリンを弾くときは体はまっすぐ前を向いています。前を向いている状態とは、 

  • おへそ

この3つがすべて同じ方向を向いている状態です。

まっすぐ前を向いて立つだけならそう難しくはありません。ところがまっすぐ前を向いて立ち「体をグラグラさせない」で維持することは、慣れないと大人でもなかなか大変です。最初は「まっすぐ前を向いて立ち、体をグラグラさせずに1分間姿勢を維持する」練習から始めてみましょう。

楽器を構えると上半身が回転します

初心者はバイオリンを構えると上半身が少しずつ左に回転していきます。ぱっと見に分からない程度ですが、膝、おへそ、顔の向きが少しずつずれていきます。これはもう姿勢が崩れた状態なので、膝、おへそ、顔の全てが同じ方向を向くように矯正してください。

まっすぐ立っている状態を維持するのは意外に難しい

【2】頭の頂点は常に天井を向いている

頭の頂点は常に天井を向いた状態(まっすぐ前を見た状態)を保ってください。頭を傾けてバイオリンを挟むのは間違いです。また、構えてから時間が経つと頭が下を向きがちになる人がいますが、これも姿勢が崩れた状態です。構えた最初も時間が経過しても、頭の頂点は常に天井を向いているのが正しい姿です。

バイオリンの持ち方の一般的なイメージとして、顔を楽器のほうに向けて頭を倒して挟んでいるように思われることが多いのですが、【1】と【2】の両方が崩れているので間違いです。映像や写真はバイオリンを弾く姿が奇麗に見えるアングルで撮影しているので顔が横を向いて頭が倒れているように見えるのですが、顔は前を向き頭は倒さずに楽器を挟むのが正しい持ち方です。

下の写真は一見きれいな弾き姿に見えますが、顔と頭の向きが崩れているので、正しく構えられていません。加えて言うと、楽器の位置も正しい位置ではないので、いったん姿勢を戻して「まっすぐ前を向く」という基本から持ち方をやり直したほうが早いでしょう。

この弾き方は、上で解説したポイントが崩れています

【3】肩の高さ・前後を揃える

肩のチェックポイントは二種類あります。肩の高さと前後の位置です。

1.肩の高さ

肩の高さも無意識のうちに変わっています。たとえば、腕を前に伸ばしただけでその肩は上がります。肩の高さを変えるのは人間の自然な動きですが、バイオリンの持ち方としては肩の高さが違うのは良い状態ではありません。

楽器の挟み方が悪いと持ちにくさをカバーするために肩をすくめて無理に挟んだり、弓の持ち方に慣れないと腕全体に力が入って肩がすくんだり、肩が上がった状態は、悪い姿勢をますます悪くしていきます。

肩が上がってしまう時は、肩だけ直そうとしてもきれいに直らないので、いったん楽器を離してまっすぐ立つ姿勢からやり直したほうがうまくいきます。

2.肩の前後

肩の前後もすぐに動いてしまうポイントです。人間は歩くときに腕を振ってバランスをとっています。右腕が前にでると左腕は後ろに下がります。このとき、右肩は少し前に、左肩は少し後ろにズレているのが自然です。しかし、肩の前後がズレている姿勢はバイオリンの姿勢としては良くない状態です。

腕の向きや高さを確認したり、実際に楽器を構えると、それだけで肩の前後はズレていきます。最初からズレた状態で構えているので客観的に見ている大人でも「姿勢が崩れた」と気づきにくいポイントです。

肩の前後がズレていると上半身は左に回転しやすいので【1】のポイントも崩れていきます。このとき、膝と顔の向きを確認してみるとそれぞれ違う方向を向いていることが分かります。部分修正はよけいに姿勢が崩れるので、いったん正面を向いてまっすぐ立つことからやり直してみましょう。

 

楽器を離した瞬間の姿勢をチェック

「姿勢が崩れたかどうかわからない」と思ったら、楽器を離した瞬間に姿勢が変わるかどうかをよく観察してください。どこか姿勢が崩れた状態で楽器を構えていると、楽器を離した瞬間に体が前を向き直るように姿勢が動きます。少しでも動く箇所があったら、楽器を構えた状態では姿勢が崩れていた証拠です。正しい姿勢で弾いているなら楽器を離しても姿勢は変わりません。

下を向いていた頭が起き上がる、左を向いていた上半身が前を向く、持ちあがっていた左肩がストンと下がる・・・等、楽器を離した瞬間に姿勢が変わったら「楽器を構えていたときは、姿勢が崩れいていた」と判断して間違いありません。

写真に撮って比べてみる

弾き始める前の姿と弾き終わり(楽器を離す直前)の姿を同じアングルで写真に撮って比べてみてください。写真の姿勢が違っていたら姿勢が崩れています。崩れた姿勢は放っておいて直るものではないので、弾いている間も正しい弾き姿を維持できるよう大人が矯正してあげてください。

弾き終わって楽器を離すとき、姿勢が変わっていませんか?

良い姿勢は無理なくラクに弾ける姿勢

【1】【2】【3】のすべてができている状態は、体は難しい体勢をとっているわけではなく、むしろ筋肉を自由に動かせる状態を作っています。バイオリンの演奏では肩の筋肉を大きく柔軟に使う必要がありますが、崩れた姿勢は筋肉の動きを阻害しています。普段の生活では使わない動かし方をするので慣れないと難しく感じられますが、正しい姿勢と持ち方に慣れると【1】【2】【3】が揃って初めて良い動きができると分かります。

最初は音より姿勢に注力

音を出す練習が始まると、大人もつい姿勢より音を出すほうに意識が向いてしまい、姿勢のチェックがおろそかになりがちです。姿勢が安定するまでは、大人は音よりも姿勢に意識を集中してください。姿勢が良くなれば音も良くしていけますが、姿勢が悪いうちは音も良くならず、弾きにくいままなので上達も遅れます。

慣れるまでは、大人の協力が欠かせません

最初のうちは大人が手を出して直していかないと正しい姿勢を維持できません。面倒に思えるかもしれませんが、体が正しい形を覚えられれば大人が何度も矯正しなくても正しい持ち方ができるようになります。大人のサポートは自転車に例えると「補助輪」のようなものです。乗り方に慣れるまでは補助輪をつけたまま自転車に慣れていきます。体がバイオリンの姿勢を覚えるまでは、大人の矯正のある状態で練習しましょう。補助輪は、一人で自転車に乗れるようになったら外せます。大人のサポートも、子どもが一人で姿勢を維持できるようになったら外せばいいのです。

最初のうちは、大人が「正しい姿勢」を一緒に作ってあげてください