バイオリンを小学校高学年から習はじめるのは、もう遅いのでは?

バイオリンはなぜ低年齢から?

小学校高学年生の子どもがバイオリンに興味があると言ったら、親は素直に喜ぶより「今からでは遅すぎるのでは?」と懸念することが多いかもしれません。

ネット検索しても「3歳からはじめるのがいい」「早くはじめるほど良い」という情報が多く、高学年生から始めて上達した事例がなかなか見つかりません。

ですが、バイオリンをはじめるのに年齢は関係ありません。

大人になってから習いはじめる人もいますし、小学校高学年や中学生からバイオリンをはじめて音大に行った例もあります。

「13歳までに難曲を弾く」という目標があるなら、確かに高学年生からのスタートは遅いでしょう。でもゼロからはじめて少しずつ弾けるようになっていく過程に「開始年齢が遅すぎる」ということはありません。

では、どうして「3歳からはじめないといけない」という誤った理解が広がっているのでしょうか。

バイオリンレッスンの多くが3~4歳から受講可能と設定しています。

また、小さいころからはじめると、

・音感が身につきやすい
・姿勢が良くなる
・記憶力も良くなる

等のメリットがあるという情報も散見します。

こうした情報が広がるにつれ、「3歳からはじめたるべき」というのが定説となったのでしょう。

バイオリンをはじめる年齢ごとの特徴

バイオリンは、はじめる年齢に応じて理解や進度に違いがあります。

一概に「いつから始めるのが良い」ではなく年齢ごとの特徴に応じて、親がうまくサポートしてあげることが長く続けて上達の秘訣だと言えるのではないでしょうか。

未就学児

音楽レッスンの一回あたりの時間はおよそ30分程度ですが、ほとんどの未就学児くらいの子どもは30分フルに集中できません。

もって5~10分程度で、レッスン時間の大半は遊んでしまうか不機嫌になってしまいます。むしろ幼児に30分を集中させることに無理があるので、この頃はレッスンに通っても進度はゆっくりです。

幼児に飽きさせない工夫をしている教室では、バイオリンそのものを教える時間は短くして、歌や手遊びなどを加えて音楽に親しむことを主体にしています。

理論的な説明は理解できないので、正しい姿勢よりも「自分の体の癖に従った。崩れた弾き方」になりがちです。正しい姿勢・持ち方が身につくまで半年から1年かかることも普通です。

小学校低学年

小学校低学年は本人が「バイオリンを弾きたい」と自分で意思を持ってはじめられるようになる年齢です。しかし精神的な成長には個人差が大きく、集中力が10分程度しか続かない場合もあれば高学年生並みに努力できる場合もあり、同じ年齢でも進度がずいぶんと違います。

正しい姿勢や正しい弾き方があると言っていることは理解できても、自分の姿勢や弾き方が崩れていることを理解できず、崩れた姿勢のまま弾き続けることも珍しくありません。保護者は良い姿勢に直してあげようとして手伝いますが、保護者の介入が自分の演奏を邪魔していると感じて嫌がることもあります。「将来の成果のために今努力する」という考え方がまだできない年齢なので、姿勢や持ち方の基礎練習をやりがたらないのも無理はありません。

姿勢や持ち方が悪いまま練習を続けても上達は遅いのですが、この先ずっと上達しないということではありません。精神的に成長して「うまくなるには基礎練習が大事」と理解できれば必要な練習ができるようにない、ちゃんと上達していきます。初期のころの遅れは後から挽回できるのです。

一方で、正しい姿勢や正しい弾き方に比較的早く慣れる場合もあります。一度慣れてしまえば良い姿勢・良い弾き方で練習できるので、こうなると上達は早いです。バイオリンをはじめてから1ヶ月ちょっとの練習でも堂々とした弾き姿で演奏している例も少なくありません。

子どもは大人よりも覚えるのが早く、良い姿勢と良い弾き方が身につくとどんどん上達していきます。大人が一緒に練習しても追いつかないほどです。

極端な例を示しましたが年齢が低いほど個人差が大きいので、その子の成長に合わせた進度になると理解してあげてください。

小学校高学年

バイオリンをはじめるには遅いと思われがちな小学校高学年ですが、実はこの年齢層からはじめても遅すぎると決める要素はほとんどありません。

低学年の子と同様、自分の意思で「バイオリンをはじめたい」と意識してはじめられるうえ、理論的な説明も理解できるようになります。「直角」や「てこの原理」という言葉が分かるので、何が正しい姿勢なのか頭で考えて練習できます。

ほかにも「格好悪い姿勢で弾きたくない」「雑音が嫌だ」等、見栄えも気にするようになるので基礎練習の意味も理解して取り組める年齢です。テレビやYouTubeのバイオリンに憧れて興味をもったなら「何が奇麗な弾き姿か」「どんな音が良い音か」という理想形をしっかりイメージできています。この「あるべき姿」をイメージできることも、上達を後押ししてくれる要素です。

さらに、高学年生は30分のレッスンを飽きずにしっかりこなせるので、同じ30分の時間を使うのでも未就学児や低学年生より内容の濃いレッスンが受けられます。たとえて言うなら、低学年生が一度に「3」進むなら、高学年生は一度に「7」「8」進める、という具合です。

開始年齢よりも、上達には親の役割が大きい

バイオリンを習うのは子どもですが、子どもが正しく学んでいくためには親の強力が必要不可欠です。他の習い事なら「親は送り迎えだけすればよくて、練習の中身は先生に任せきり」でもいいかもしれませんが、バイオリンは家での練習を親が見てあげる必要があります。

たとえば調弦です。バイオリンは弾く前に調弦が必要ですが、低学年生が調弦を理解するのは難しいので一人では調弦できません。当然、親が毎回の調弦を行うことになります。高学年生なら理解すれば一人でも調弦できますが、間違った調弦をしてしまった場合は親が気づいてあげないと間違ったままになります。

姿勢を直すのも親の役割です。心者のうちは姿勢が崩れていることに自分では気づけません。鏡を見て姿勢を直せるようになるのは十分慣れてから。それまでは隣で客観的に見ている親が姿勢の崩れに気づいて直してあげる以外に手段がありません。 

低学年生だと親に姿勢を直されることを「邪魔されている」と感じて嫌がることもあります。音が良くならないので親はイライラが募りますが、そこで喧嘩ばかりでは子どもはバイオリンの練習を「楽しくない」「もうやりたくない」と思うかもしれません。せっかく興味をもってはじめたのですから、親のほうが子どもの精神的な成長を根気強く待ってあげましょう。そういう意味では、年齢が低いほど親のサポートは長く必要になります。

年齢ごとに身体や精神的な成長の段階が違うので上達の速度にも差が生じますが、それはあくまでも成長段階の違いであって才能の差ではありません。

どんな年齢からはじめても「バイオリンを弾きたい」という憧れや意欲が上達の第一歩です。何歳から始めても「バイオリンを上達したい」「バイオリンが楽しい」と思えるよう環境を整えてあげることが、長く続けて上達する秘訣ではないでしょうか。