初心者のためのバイオリン調弦(チューニング)ガイド~最初に覚えるべき基本手順
- バイオリン・プロジェクト講師チーム
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調弦(チューニング)とは
ケースから取り出したばかりのバイオリンは、音が正しくありません。時間とともに弦のテンション(張り具合)が変わってしまうので、何もせず保管しているだけで弦の音は変わっていきます。狂ってしまった弦の音を正しく調整することを「チューニング(調弦)」と言います。
ピアノも、88本の弦をハンマーで叩いて音を出す楽器なので、徐々に弦のテンションが変わり音が狂っていきます。ピアノも音を調整する作業を必要としますが、ピアノの場合は1年に1回、または半年に1回、専門の調律師さんに音を調律してもらいます。
一方で、バイオリンは毎日、弾く前に必ずチューニングが必要になる楽器です。安い楽器だと音が狂う、高級な楽器は音が狂わない、ということではありません。1億円の高級バイオリンでも、時間の経過とともに弦のテンションは変わっていくので、音は狂います。
プロのバイオリン奏者は自分でチューニングするけど初心者は先生にチューニングしてもらう、ということでもありません。プロでも初心者でも、バイオリンを弾く人は最初に自分で弦の音を調整することから始めます。
ピアノの調律には調律用の道具が必要だったり、時間も1-2時間を要する大掛かりなものですが、バイオリンは手元で1分で直せます。習い始めの最初のうちはチューニングだけで10分、20分とかかることもありますが、毎日続けるうちにやり方に慣れて1分で済むようになります。
チューニングに必要なもの
長年バイオリンを弾いて慣れた人は自分の耳だけでチューニングできますが、初心者は音の微細な違いが分からないので「チューナー」という機器に音の判断をしてもらいます。
チューナーは楽器店で購入できますが、当レッスンではスマホのアプリを利用しています。チューナーのアプリは有料・無料いろいろありますが、多機能なほど初心者には使いにくいので、チューナー機能だけのシンプルなアプリが初心者には使いやすくてお勧めです。
無料のチューナーアプリは多数あるので、迷ったら「バイオリン練習にあると便利なスマホアプリ」を参考にしてください。
チューナーの使い方
チューナーとは「ドレミ・・・のうち何音が出ているか」を教えてくれる道具です。
バイオリンのチューニングを行う際は、チューナーの標準音(基本となるラの音の周波数)を442Hzに設定します。アプリの標準音の設定方法は「バイオリン練習にあると便利なスマホアプリ」で説明しているので参照してください。
チューナーに楽器や声など何か音を聞かせると、聞かせた音が「ドレミファソラシ」のどの音なのかを、画面の中央上部の英字(C、D、E・・・)で教えてくれます。
D=レ
E=ミ
F=ファ
G=ソ
A=ラ
B=シ
聞かせた音は必ずしも「ド、レ、ミ・・・」のピッタリの音ではないので、正しい音から少しズレている場合は「正しい音より高め」「正しい音より低め」を針が左右に振れて教えてくれます。
針が左に振れているときは「正しい音より低め」針が右に振れているときは「正しい音より高め」の意味です。針が中央にきたとき、緑色のランプがついて「正しい音」であることを教えてくれます。
調弦(チューニング)のやり方
チューニングの際は、チューナーに弦の音を聞かせて、正しい音になるように、ペグまたはアジャスタを回して音の高低を調整します。
ペグやアジャスタで自由に音を変えられるので、理論上は4本の弦を「ド、ド、ド、ド」と全部同じ音にしたり「ド、レ、ミ、ファ」と音階にしたり、好きな音に合わせられます。しかし、バイオリンで最初に合わせる音は下のように決まっています。
ソ(G3)
レ(D4
ラ(A4)
ミ(E5)
カッコ内はチューナーの表示
このとき、♯や♭の記号がつかないようにしてください。♯や♭はピアノに例えると「黒い鍵盤の音」です。バイオリンで合わせる4つの音はすべてピアノの「白い鍵盤の音」なので、♯や♭がつかないように調整していきます。
弦の音を変えるには、アジャスタを回して弦のテンション(張り具合)を変えて調整します。テールピース一体型のネジ(黒色)または弦に後付けのネジ(銀色)がアジャスタです。6週間レッスンで貸し出している楽器には4本の弦すべてに黒または銀色いずれかのアジャスタがついています。
実際にチューニングしている様子を動画で紹介します。
アジャスタだけでなく、ペグも適切に使う
アジャスタと同じことはペグでもできます。ペグを回すことで弦のテンションが変わります。アジャスタを1回転してもあまり音は変化しませんが、ペグをほんの少し回しただけで急に音が変わります。ペグを使うか、アジャスタを使うかは、その時どれだけ音を変える必要があるかによって判断します。最初はどちらを使うべきか悩みますが、慣れてくると都度判断できるようになります。
初心者はペグを回すことを怖がってアジャスタだけでチューニングすることが多いのですが、音の狂い幅が大きい場合や弦が緩んでいるときはペグを回す必要が出てきます。普段ペグを触っていないと、ただ弦が緩んだだけの状態でも自分で直せずわざわざ楽器店に持ち込むことも珍しくありません。毎日のチューニングでペグを回すことに慣れておきましょう。
また、アジャスタだけ回し続けていくと、アジャスタの形状によっては楽器の表板を傷つけてしまうことがあります。アジャスタの注意事項は「アジャスタの回しすぎに注意!」を参考にしてください。
ペグでチューニングしている様子を動画で紹介します。
チューニング時に注意すること
1.チューニングは静かな環境で行う
テレビの音や人の話し声など、気になるほどでなくても周囲にバイオリン以外の音がある環境はチューニングには適しません。チューナーが周囲の音を拾って表示してしまうので、どれがバイオリンの音の表示なのか分からなくなります。チューニング時はテレビの音を消す、人のいない場所を選ぶ等、静かな場所で行いましょう。
2.弦のゆるみがないか、あらかじめ確認する
湿度や温度の変化が大きいと、それだけで弦が大幅に緩んでいることがあります。緩んだ弦は1オクターブ以上音が狂っているのでその状態からチューニングしてもなかなか音が合いません。弦が緩んでいたら最初にペグを回して弦を締めてからチューニングを行いましょう。
3.ペグは1ミリずつ回す
ペグを回すときは1ミリずつ回すと覚えましょう。厳密に1ミリである必要はないのですが、少しずつ回すようにしてください。いきなりグルっと回すと弦が切れるか弦が緩んで外れるか、このどちらかです。弦が緩んだだけなら弦を戻せばいいのですが、弦が切れると切れた弦は使えないので交換しなければなりません。
4.時間に余裕をもってチューニングを行う
もうすぐレッスンが始める時間だからと慌ててチューニングすると弦を切ってしまうことがあります。湿度の変化が大きくて昨日より音が大幅に狂っている等で、数分で終わると思っていたのにちょっと手間取ってしまうこともあるでしょう。急いでチューニングを終わらせようとペグを急いで回して弦を切ってしまったという事故は、珍しくありません。
チューニング時に弦を切ってしまったら
弦は劣化しますし演奏中やメンテナンス中に切れることもあるので、弦が切れたこと自体は致命的な事故ではありません。自転車に例えると「パンクしちゃった!」と同じくらい、バイオリンを弾く人なら誰でも経験があります。
切れた弦は使えないので、新しい弦を張る必要があります。
チューニング中に弦を切ってしまった場合は「バイオリンの弦が切れた時の対処法~初心者でもできる簡単な弦交換ガイド」を参考に弦を交換してください。
練習のたびにチューニングを!
チューニングに苦手意識があると家での練習でチューニングを行わない人がいます。最初は面倒に思えるかもしれませんが、バイオリンを弾くときはたとえ短時間の練習でもチューニングをしてから弾き始めましょう。
チューニングしない状態では弦の音は狂ったままです。正しい音の弦で練習すれば左手の指の位置や音を覚えていけるのですが、音が正しくない状態で練習しても指の位置のズレに気づかず音も覚えません。
何より、正しい音で弾かないとどんなに練習してもちゃんと曲になりません。
初心者のうちはチューニングだけに10分、20分とかかることも珍しくありません。音が合わないからと途中で投げ出さず、正しい音になるまで時間をかけてチューニングを行いましょう。チューニングができないと思っている人は、ほんとんどが正しい音になる前にチューニングを諦めてしまっています。時間をかけても正しい音になるまでチューニングを行うことが、チューニングの練習です。
先生に頼まないと、調弦できない!
調弦が苦手だからと先生にやってもらうと、いつまでたっても自分で調弦できません。正しく調弦できなければ楽器の仕組みも覚えないし、効果的な練習もできません。一度だけ、時間をかけて最初から調弦を練習してみましょう。
「バイオリンをもっと身近に感じてほしい」の思いを持ったバイオリニストによる講師チーム。オンラインならではの教え方を工夫しています。日本国内だけでなく海外からもレッスン実施中。