ペグホールに刺さったペグ

ペグを回すと弦が外れる!初心者が注意すべきペグの調整法

バイオリンを始めたばかりで調弦を苦手に思う人は少なくありません。ペグを回すと弦がほどけてしまって音を合わせられないのです。

ペグの回し方にはコツがあります。この記事では、初心者向けにペグの調整方法を詳しく解説します。

まずペグの仕組みを理解しよう

ペグは複雑な部品ではありません。ペグはネックの孔(ペグホール)に刺さっているだけで、摩擦の力で固定されています。摩擦が緩めばペグも緩みますし、摩擦が強くなればペグは固く動かなくなります。この仕組みを分かっていればペグを回すことは怖くありません。

1.ペグは摩擦で固定されている

ペグはバイオリンのネック部分にある孔(ペグホール)に刺さっているだけでの単純な構造です。バイオリン本体もペグも木製なので木と木の摩擦によってペグが固定され、弦をピンと張れるようになっています。

弦がまっすぐピンと張られているということは、別の見方をすると弦は常にテールピースとペグの両方に引っ張られている状態です。ペグには常に引っ張られる力が加わっていることになりますから、摩擦でしっかり固定しなければペグはすぐに緩んでしまいます。

ペグを固定する力は木の摩擦だけです。摩擦を強くすればペグはしっかり固定されますし、摩擦を緩めればペグも緩みます。

ペグホールから外れたペグ
ペグは孔に刺さっているだけ

2.ペグは根元が太くて、先端が細い

ペグの形状をよく見ると、つまみ部分に近い根元が太くて、根元から離れると徐々に細くなります。太さが均一ではなく、例えて言うと三角コーンのように根元と先端の太さが異なります。

このため、ペグを押し込むほどペグ穴とペグの間に生じる摩擦は強くなり、ペグを引き抜くと摩擦は弱くなります。

ペグの太さが違うことを示す図
ペグは根元から離れるほど細くなる

3.弦はペグに巻き付いているだけ

弦はペグに巻き付いているだけの状態です。ペグがしっかり固定されていれば弦もピンと張られていますが、ペグが緩むと弦もすぐにほどけて外れてしまいます。

弦の先端はペグの小さな穴(ストリングホール)に刺さっています。玉止めや接着剤で固定されているのではなくただ弦の先端が穴に刺さっているだけなので、ペグが緩んで弦の巻き付きも緩むと弦の先端も穴から外れてしまいます。

バイオリンのペグ
小さな孔がストリングホール
ペグに巻き付いた弦
弦はペグに巻き付いているだけ

ペグを回すときの注意点

上で説明したとおりペグは摩擦で固定されているだけで、弦はペグに巻き付いているだけ。ペグがしっかり摩擦で固定されるようにペグを回さないと、何度回してもペグは緩んで弦がほどけてしまいます。

1.押し込みながら回す

ペグは回すだけでなく、押し込みながら回すのがポイントです。上の説明のようにペグは根元に近いほど太さが太いので、押し込みながら回すことによって摩擦が強くかかります。適切な摩擦がかかっていればペグが動かないので弦が緩むことなく調弦できますし、調弦してすぐ弦が緩んで音が狂うようなこともありません。

押し込まずにペグを回すだけだと先端寄りの細い部分が穴の中に残り、摩擦が足りずペグは固定されません。なので、押し込みながら回すのがペグを回すときの基本です。

ペグの解説図
ペグは孔の奥に押し込みながら回す

2.ペグは1ミリずつ回す

ペグは摩擦で固定されているので、ペグを回すときはネックをしっかり支えて力を入れて回す必要があります。だからといってペグを回す時に勢いよく回してはダメです。勢いに任せて大きく回すと弦が切れるか、緩みすぎて弦が外れてしまいます。

だからペグを回すときは1ミリずつ回すと意識してください。厳密に1ミリである必要はないのですが、要は少しずつ回すようにしたいのです。

自転車のチェーンを引っ張り過ぎると切れてしまうのと同じように、バイオリンの弦も突然の強い力には耐えられず切れてしまいます。ペグを1ミリずつ少しずつ回すことで、弦に過度な負担をかけずに調整できます。バイオリンの4本の弦のうちE線は細くて切れやすいので特に注意が必要です。

バイオリンを習い続けていたら弦が切れたり外れるのは珍しいことではありませんが、初心者は弦の交換も苦手なら外れた弦を戻すのも苦手。少しでも面倒ごとが増えないよう、ペグは1ミリずつ回してください。

3.子どもの楽器は保護者がペグを調整する

特に低学年生は手が小さくて力の加減もまだ要領を得ません。楽器を安全に扱うためにも、子どもの楽器は保護者がペグを回しましょう。子どもが一人でペグを回すと、力を入れすぎて弦を切ってしまったり、押し込みながら回すことを理解できず弦が緩んでしまったりと、大人でもペグの調整を苦手に思う人が多いのですから、子どもが上手くできなくても当たり前です。

ペグの調整が上手くできなくて弦が緩んでしまったら戻せばいいのですが、弦を切ってしまった場合は子どもながらに「自分が壊した」と思ってショックを受けることもあります。子どもの楽器の調整は保護者が責任を持って行いましょう。

4.ペグが固くて動かないとき

木製のバイオリンは周りの湿度や温度の変化に日々影響を受けています。木は湿度を吸えば膨張しますし、乾燥すれば湿度が減って圧縮します。このためペグの摩擦は一度調整しても常に一定なわけではありません。温度や湿度が変わればそれだけで摩擦の具合も変わってしまいます。

なので、昨日までスルスル回っていたペグが今日は固くて動かないとか、昨日まできちんと固定されていたペグが今日は緩くてほどけてしまうとか、勝手に状態が変わっていることは珍しくありません。

ペグが緩んでしまったら強く押し込んで摩擦がかかるようにします。反対にペグが固くて動かなくなったら、このときはペグを引き抜きながら回して摩擦を弱くします。

ペグが動かないのは摩擦が強すぎる状態なので、押し込みながら回そうとするとますますペグは動かなくなります。この時だけはペグを引き抜きながら回して摩擦を弱くします。押し込むときと同様に、1ミリずつ少しずつ回しましょう。勢いよく引き抜くと、ペグが緩みすぎて弦が外れます。

そのペグ、調整したほうがいいかも?

そもそもペグやペグホールの形状が正しくないと、いくら気を使って回してもペグを適切に調整できません。楽器によってはペグやペグホールの円形がいびつだったり、ペグの太さがペグホールと合っていなかったり、ストリングホールの位置がペグホールと重なっていることもあります。これではペグの摩擦を適切に調整できません。

ペグホールやペグはただ木をくり貫いたとか削り出しただけではなく、職人の手で繊細な調整がなされている部分です。楽器店で購入する場合はペグホールやペグは適切に設定されて引き渡されますが、安すぎるセット販売の楽器には形状が悪いものも混じっています。

ストリングホールの位置が正しくない場合はペグを交換する必要があります。ペグを回した時の感触がきつかったり緩かったりとムラがある場合や、引き抜くように回してもきつくて回らない場合など明らかに違和感がある場合は、購入した楽器店に相談してみましょう。

 

先生に頼まないと、調弦できない!

調弦が苦手だからと先生にやってもらうと、いつまでたっても自分で調弦できません。正しく調弦できなければ楽器の仕組みも覚えないし、効果的な練習もできません。一度だけ、時間をかけて最初から調弦を練習してみましょう。

バイオリンを演奏するリスのイラスト

「バイオリンをもっと身近に感じてほしい」の思いを持ったバイオリニストによる講師チーム。オンラインならではの教え方を工夫しています。日本国内だけでなく海外からもレッスン実施中。