Zoomでバイオリンを習っても、上達しないと思ってた

習い事にオンラインは不向きでは?

2020年以降、企業、学校、ショールーム、学習塾、・・・様々な分野でオンライン形式のコミュニケーションが普及しました。2022年現在、ZoomやTeams、Webexなど、何らかのオンライン・コミュニケーションツールを使ったことがある人は多いでしょう。

しかしそれでも「楽器はオンラインでは上達しない」「教室に行かないとできるようにならない」と言ってオンライン・レッスンが敬遠される場面は多々あります。

子どもの習い事は、子どもだけでなく親が積極的に「どこで習うか」を検討します。親世代はオンラインで習い事をした経験がありませんから、オンライン・レッスンの利点が分かりません。だから無意識のうちに「習い事は教室のほうがいい」と思い込んでしまうバイアスがあっても理解できます。

しかし、冷静に比べてみたら、オンライン・レッスンならではの制約はもちろんありますが、教室レッスンが絶対的に優れているわけでもありません。オンラインと教室とではそれぞれに長所・短所があります。

オンラインの短所と思えることは、実は長所にもなる

楽器なのかスポーツなのか等、習い事の種類によってもオンラインと教室の長所・短所は変わってきますが、ここでは未経験の小学生のためのバイオリン・レッスンを前提に考えます。

オンライン・レッスンの制約は何より「講師が生徒の楽器を直接触れない」ことです。一方で、教室レッスンなら楽器の持ち方や姿勢を直接講師に直してもらうことができます。

しかしこの「教室なら楽器を直してもらえる」という利点は、未経験者のバイオリン上達には邪魔になることがあります。

未経験者がバイオリンを始めて最初の関門は「持ち方・姿勢」です。これは体験会に参加すると誰でも痛感するのですが、最初は持ち方や姿勢がすぐに崩れるし、なかなか定着しません。レッスン時間の練習だけでできるようにはなりませんから、レッスンの無い日も家で練習を続けます。

未経験者の場合は、高学年生であっても小学生一人で練習するのは困難です。無意識の身体のクセには一人では気づけないので、家での練習は親(保護者)にみてもらう必要があります。このとき家には講師はいませんから、崩れてきた持ち方や姿勢は親が手を添えて直してあげる必要があります。

教室ですべて講師に直してもらっていると、親は安心して見ていることがほとんどで、自分で直し方を覚えていません。だから家での練習がなかなか進まないことも珍しくありません。

これがオンライン・レッスンだと講師の代わりに親が積極的に手を動かすようになるので、家での練習のときも親が持ち方や姿勢を直してあげられます。

「オンラインでは直接楽器を直してもらえないから、上達できない」ではなく、実は「オンラインでは親も積極的に関わるから、家での練習もはかどる」というポジティブな側面があるのです。

親にバイオリン経験ないから、無理・・・ではない

オンライン・レッスンでは講師は目の前にいないので、持ち方や姿勢が崩れたときは、すぐ隣にいる親が手を出して持ち方や姿勢を直す必要があります。オンライン・レッスンを担当する講師はその点を心得ていますから、近くにいる大人に「持ち方を直してください」と指示を出します。

「親だってバイオリン未経験なのに教えられるわけがない」と思うかもしれませんが、大人に期待される役割はバイオリンを弾けることではなく「受講者の姿を良く観察して、講師の指示どおりにできていないところを探す」ことです。

バイオリンのレッスンでは、講師の指示は意外にシンプルです。大人が聞いている限りは、難しいことは何もありません。しかしこれが、楽器を弾いている小学生には難しく感じられます。講師の言っている意味が理解できないのではなく、講師の言う通りにやっているつもりなのですが、実際はできていません。隣でみている親にはもどかしく感じられるのですが、これは小学生の理解度が足りないのではなく、身体がまだバイオリンの弾き方に慣れていないことが原因です。身体をうまく動かせないので、指示通りのことができません。

ここで親なり第三者が「そうじゃないでしょ」と言葉で指摘するより、講師の言う通りにできていない部分を、直接手を出して矯正してあげるほうがうまくいきます。身体に「正しい動き」をインプットして、身体がその動きを覚えさせてあげるイメージです。だから親がバイオリンを弾けるかどうかではなく、講師の指示を聞いて弾き姿を観察することのほうが重要です。小学生は「弾く人」その親は「サポートする人」の役割分担です。役割が違うので、親は必ずしもバイオリンを弾ける必要はありません。

こう説明すると親の負担が大きいと思うかもしれませんが、オンラインでも教室に通っていても、家で練習が必要なことは同じです。教室ではつい受け身になりがちですが、オンラインでは親もサポートのやり方を練習するので家での練習も着実に進みます。

そもそも初心者が練習できるのは1日10分です。慣れればもっと長く弾けますが、最初は10分がやっと。6週間という期間が限定されて目標が明確なら、毎日10分の練習時間を親も頑張る気になります。大人になると新しい習い事をする機会はほとんどなくなるので、子どもと一緒にバイオリンを覚えるのは期待以上に楽しいものです。

実際にオンラインでこれだけ上達してる

始める前からバイオリンは難しいと大人は知識で思い込んでしまうのですが、実際の練習は意外にシンプルです。基本形を着実に身につけていけば曲として完成するし、音も綺麗になります。

親子とも楽器経験なくても、6週間レッスンではみな曲を弾けるように上達しています。オンラインだけでここまで弾けると思わなかった、という参加者の声はたくさんあります。未経験から始めて6週間後の受講者の成果(演奏動画)もご参照ください。

最初の基礎練習は誰でも大変だと思うものですが、少しでも曲を弾けるようになると楽しくてどんどん弾くようになります。自転車だって、乗れなくて練習しているうちは大変だと思うのですが、乗れるようになってサイクリングに行けば楽しくなります。そして、最初に何度も転んだ経験なんて忘れてしまうように、バイオリンの最初の基礎練習も「そういえば、そんなこともあったね」という程度に忘れていきます。

オンラインならではの長所

オンラインなら送り迎えの時間がいらないという長所もあります。そうすると多少遅い時間でもレッスン受講できるので、両親の仕事の後で受講することもできます。

外に出ないと習い事気分にならないという場合には欠点ですが、外に出なくて済むので基礎疾患がある場合でも受講可能になります。外遊びが苦手なら、一時だけバイオリンと向き合ってみてもいいかもしれません。バイオリンは立って練習しますし、常に姿勢を意識しつづけるので意外に体力・集中力を使います。

オンラインで講義を受けるだけなら刺激が少くてつまらないかもしれませんが、バイオリンの場合は実際に楽器が手元にあります。弾けば上達を実感できるので、オンラインだけでも十分な達成感があります。

従来型の教室レッスンに加えてオンライン・レッスンという形態の登場によって、教室には通いにくかった人でも習い事に参加できる選択肢が増えました。オンライン形式を無条件に敬遠するのではなく、ライフスタイルに合わせて積極的に検討の対象にしてほしいと思います。