バイオリンを弾く女性

大人がバイオリンを習うときの、強みと上達する練習

「大人からバイオリンを習うのは遅い」と言われるのはなぜ?

バイオリンは幼少期から習うイメージが強い楽器です。他の楽器と違って小さな子どもの体でも使えるサイズがあるため「バイオリンは幼少期から習うべき」と誤解されやすいのですが、大人から習い始めて弾けないわけではありません。

むしろ大人から習い始める利点もあれば、子どもとは違う楽しみ方もあります。子どものように覚えは早くないかもしれませんが、大人はただ反復練習で覚えるよりもっと効率よい方法を使えます。

ここでは、大人からバイオリンを習い始めるときの強みと大人ならではの上達の秘訣を解説します。

大人がバイオリンを習う時の強み

1.本当に興味があるから続く

子どもの習い事を決めるときは、子どもの興味もありますが、「子どもにはピアノを習わせたい」「英語を聞き取れるようにしたい」等、親の意向も強く反映されます。幼少期ほど親の意向は大きく、子どもの関心が向かなければ短期で終える習い事も少なくありません。一方で、大人になってからバイオリンを習い始める場合、誰かの意向ではなく自分でバイオリンを弾きたいと思って習い始めます。この場合、誰かに「練習しなさい」と追い立てられることもなければ、興味がないからと不機嫌になることもありません。忙しい毎日のほんの10分だけ趣味に没頭できるよう時間をやりくりしています。能動的だからこそ、子どもより長続きしやすいとも言えます。

2.楽器のサイズはワンサイズ

大人がバイオリンを始めるなら、楽器のサイズは4/4(フルサイズ)で始められます。子どものようにサイズ交換を考える必要がないので、気に入った楽器を購入して始められます。最初は中古で安く買って、腕が上がったら上位の楽器を検討しても良いでしょう。

3.正しい形をイメージしやすい

たとえば大人ならプロの演奏を見て「カッコいい、素敵だ」と分かります。言い換えると、理想とする弾き姿が分かるということです。これが小学校低学年以下になると、誰かのバイオリン演奏を素敵だと思っても、それを正しい弾き姿として理解できないことがあります。バイオリンは、意識して良い形に直していかないと、いつまでたっても崩れた姿勢で弾き続けてしまう楽器です。正しい形、ゴールイメージを明確にできることが大人の初心者の利点です。

4.目標がある=モチベーションを保てる

ただ漫然と練習を続けるだけでは大人でも子どもでも飽きてしまいます。「この曲を弾きたい」「市民オーケストラに参加したい」等、自分の目標があると練習のモチベーションも違ってきます。大人は「やりたいこと」「目標とする姿」がきっかけで始めることが多いので、受け身でならり始めた子どもよりモチベーションを維持しやすいと言えます。

5.自分の言葉で質問できる

分からないことを質問するのは当たり前と思うかもしれませんが、子どもだと自ら質問できるケースは少数です。小学校の教室を思い出してみましょう。「何か質問ありますか?」と先生に言われて活発な議論が進むより、誰もが無言でそのまま授業が終わることのほうが一般的ではないでしょうか。特に大人相手に質問するというのはプレッシャーでもあります。

質問するというのは簡単ではなく、自分がどれだけ理解して何を理解していないかという自覚がないと質問はできません。質問するというのはそれ自体が優れたスキルです。

大人のほうが子どもよりずいぶんと質問しやすくなります。自分の言葉で質問できることはバイオリンに限らず楽器に限らず、物事の上達には必須のプロセスです。

質問することの重要性は「バイオリン上達の秘訣は「質問」~これで1日10分の練習が「上達する練習」に」でも解説しているので参考にしてください。

子どもとは違う、大人のバイオリン上達のコツ

大人になると、子どもより物覚えが悪いことがあります。だからと言って上達しないのではありません。子どもと同じ練習方法を踏襲するのではなく、大人向けの練習方法を工夫する必要があります。

1.最初に理論を知る

たとえば英語教育の場合、子どもの場合は簡単なあいさつや物の名前など、身の周りにあるもの、興味を維持できるものから英語に触れていきます。大人が英語を習う時も同じ方法でもいいのですが、第二言語として英語を身に着けるなら最初に文法を知ったほうが圧倒的に理解が早いのです。

同じように、バイオリンも音を出して音の名前(ドレミ)をひとつづず覚えて・・・でもいいのですが、大人の場合はバイオリンの音階の仕組みを先に知ったほうが効率よく練習できます。バイオリンの音階の仕組みは英語に例えると「文法」の部分です。

基本の文法が分かると、弾きたいこと、やりたいことの難易度もおおよそ見当がつきますし、目標が難しすぎるなら少し難易度を下げた小さな目標から取り組むなど、無理のない練習プランを考えられます。

2.演奏を鑑賞して「良い音」を知る

バイオリンは、練習を続ければ勝手に良い音が出るわけではありません。良い音が出るよう自分で弾き方を工夫して探していきます。ですからまず良い音とはどんな音なのか知っておく必要があります。

良い音のイメージを明確にするには、たくさん演奏を聞いて感じ取るのが近道です。大人なら、演奏を鑑賞することを楽しみながらバイオリンの学習の一部として活かすことができます。生演奏の機会に出かけて子どものように落ち着きをなくすこともありませんし、YouTubeの動画からでも良い音を見つけられます。

3.音感ゲームで音感を鍛える

大人になってから音感を鍛えるのは無理と言われますが、絶対音感はバイオリン演奏の必須条件ではありません。絶対音感があるからと言って上手になるわけでもありません。

楽器の習得には音感ゼロより音感が良いほうが有利ですが、楽器の習得により必要とされる音感は「相対音感」です。相対音感なら大人になってからでも十分鍛えられます。

音楽教室のソルフェージュコースに通う必要はありません。スマホアプリの音感を鍛えるゲームで十分です。ゲームとして純粋にプレイしているだけでも少しずつ音感は鍛えられるのですが、このとき意識的に音を良く聞いているほうが効果的に音感は身に着きます。

バイオリンは指の位置が少し違うだけで音がズレてしまうのですが、相対音感が鍛えられると音のズレにも気づきやすくなりますし、音のズレに気づくと指の位置を修正しやすくなります。

お勧めの音感ゲームについては「【ワークショップ】絶対音感ない人の耳コピのやりかた~少しの音感とアプリで実現」でも紹介しているので参考にしてください。

大人の初心者が落ちりやすいスランプと対処法

1.教室通いが目的なら、サークルという選択肢もあり

比較的多いのが「教室に通うこと自体が目的になること」です。音楽教室に通うのはバイオリンの技術を身に着けるための手段のはずなのですが、「教室に通っている自分って素敵!」と満足してしまうと、練習に身が入らないことがあります。

演奏が上達することより教室に通うことを楽しみたいということであれば構わないのですが「教室に通っているのに全然弾けるようにならない」と感じたら、自分にとって何を優先したいのか、もう一度考えてみましょう。教室に通うライフスタイルなのか、演奏の上達なのか、目標はどちらでしょうか。上手になりたいと思ったら、教室に到着して満足するのではなく教室に入ったらスタート。家で何を重点的に練習すればいいのかしっかり理解してきましょう。

もし教室に通うライフスタイルを楽しみたいのなら、地域の器楽サークルという選択肢もあります。居住地域にサークルがなければ、最近はオンライン上でも音楽サークル活動している団体もあります。マイナーな楽器ほど地域で仲間を見つけることが難しいため、オンライン上の交流を利用するケースも増えています。

2.言い訳するならいちど休む

大人の初心者は目標を見つけやすい一方で、大人ならではの言い訳も達者になります。「時間がなかった」「忙しかった」「急用ができて・・・」等、大人は何かを「やらない」ことに関して言い訳が得意です。

練習よりも言い訳が多くなるくらいなら、いっそバイオリンから一時期離れてみましょう。練習の必要がなければ言い訳する必要もありません。言い訳を繰り返していると罪悪感でいっぱいになるか、罪悪感を感じない場合は言い訳が常態化するか、いずれにしてもバイオリンの上達の妨げにしかなりません。

一時期バイオリンをお休みして、気分がスッキリするなら今はバイオリンを弾く時期ではありません。いや、やっぱり弾きたいなと思うなら、気持ちを入れ替えて練習を再開しましょう。いやバイオリンを弾かない方が気分がいいと思うなら、少なくとも今現在はバイオリンへの関心が薄れているので練習してもうまくはなりません。

疲れがたまったり、コントロールできないくらいに予定が詰まったりするなら、お休みするという選択肢を持ってください。子どもの場合は進級と共に学業の比重が大きくなるため一度やめると後になって再開することがほとんどありませんが、大人の場合は、今が難しいなら後に回してもいいのです。

大人が始めやすいのはオンライン

音楽教室に通うとなると往復の時間も含めて習い事の時間を工面する必要があります。オンラインレッスンの場合は往復の時間を節約できるうえ、比較的遅い時間でも対応しているので仕事の後でもレッスン時間を作りやすいのが利点です。最近ではオンラインの会議や商談も普及しているので抵抗感も少ないのではないでしょうか。

オンラインで楽器のレッスンは無理と考えられがちですが、オンラインだからこそ利点もあります。教室レッスンではその場で見て理解できるのですが、このとき「分かったつもり」になっていることも多々あります。家に帰ってみると同じ練習を再現できないということは珍しくありません。

一方で、オンラインでは言葉で受け答えをしないと意思疎通ができませんから、分かったこと、分からないことを自覚しやすいのです。何が分かっていて何がわからないのか、何を難しいと感じているのかを自覚することは上達の第一歩です。オンラインの欠点と思われていたことが実は利点にもなるのです。

オンラインの楽器レッスンのメリットは「バイオリンをZoomで学ぶ~オンラインレッスンでも上達できる!」でも紹介しているので参考にしてください。

最初は「1曲だけ」から挑戦してみる

バイオリンを弾いてみたいけど、続けたいと思えるかどうかは正直わからない・・・実はそう思う人も多数です。楽器の習い事を始めるとなったら、楽器を購入して教室に入会して・・・簡単にやめると言い出しにくいのも事実。だったら、最初から1曲だけレンタルで弾く、と割り切って挑戦してみてはいかがでしょうか。

1曲弾いてみて、もっと弾きたいと思えたら楽器を購入して本格的に始めたらいいのです。とくにバイオリン等の弦楽器は気軽に試せる機会がほとんどないので、初期投資をして始めるか諦めるかの二択になります。オンラインレッスンでは一般の教室より自由度が高いことが多く、そういう意味でも大人にとって始めやすいレッスン形態です。

次のページでオンラインレッスンの詳細を見てみましょう。

バイオリンを演奏するリスのイラスト

「バイオリンをもっと身近に感じてほしい」の思いを持ったバイオリニストによる講師チーム。オンラインならではの教え方を工夫しています。日本国内だけでなく海外からもレッスン実施中。