バイオリンの持ち方を練習する親子

バイオリン持ち方・構え方の基本(1)楽器の位置~初心者にありがちな間違い

バイオリンの持ち方は、毎日練習して少しずつ慣れていくもの

バイオリンは肩と顎を使って構える楽器です。左手で楽器を支えるのではなく、肩と顎だけで安定させます。力任せに挟んでいるように思えるかもしれませんが、正しくは「てこの原理」を利用して、小さな力で楽器を固定させています。

手で支えることなく肩と顎だけで楽器を固定させる持ち方は、未経験者にはすごく難しく思えるのですが、慣れてしまうと「なんであんなに難しいと思っていたんだろう?」というくらい簡単な動作です。たとえて言うなら自転車の乗り方に似ています。乗れるようになるまでは細いタイヤ2本だけで安定していることが信じられませんが、自転車に乗れるようになると「なんでこんな簡単なことができなかったのだろう?」というくらい自然な動作です。あなたも思い当たりませんか?

持ち方の練習も自転車の乗り方の習得と似ていて、1回でいきなりできるようになる人はいません。毎日練習して少しずつ慣らしていきます。

当記事では持ち方の基本を解説します。今回はまず「楽器の正しい位置」について説明していきます。正しい位置ができてから「挟み方」を練習します。

「挟み方」については「持ち方の基本(2)楽器の挟み方~力まかせに挟んでもダメ!正しい挟み方は「二重顎」」で解説しているのでこちらを参考にしてください。

バイオリンを顎で挟む女性(バイオリンの持ち方解説用)

バイオリンを弾けるようになるには、なぜ持ち方の練習が必要か

バイオリンは、姿勢と持ち方が重要な楽器です。姿勢と持ち方が良ければどんどん上達しますが、姿勢や持ち方が悪いと練習してもなかなか上達しません。

とくに「音」には姿勢と持ち方の影響が大きく表れます。6週間レッスンの受講者の感想でも「弾き方(運指)は思ったほど難しくなかったが、奇麗な音を出すのは難しかった」という声は少なくありません。

バイオリンの持ち方は1日で習得できるものではありませんが、初心者はできるだけ早く持ち方に慣れることが上達のカギとなります。

また、バイオリンは肩と顎で支える構造のため、誤った持ち方を続けると首や肩に負担がかかり、痛みや疲労の原因になります。正しい持ち方を習得することで、演奏が楽になり、音も安定しやすくなります。特に初心者は、早い段階で正しい持ち方を身につけることが上達への近道になります。

楽器の正しい位置

バイオリンの持ち方にはいくつかの要素がありますが、まず最初のチェックポイントが「楽器の正しい位置」です。

楽器の位置が適切でないと、弓を持つ右腕は正しい動きになりません。弓の動きが適切でないと音が悪くなります。また左手の運指も形が悪くなり、正しい弦の位置を押さえられなかったり押さえ方が不十分で音がズレたり汚い音になります。

逆に、正しい位置で持てていれば、弓がスムーズに動き、左手も正しい運指ができるので音の安定感が増します。だから持ち方は音の良し悪しに直結するのです。

1.「楽器を左の肩に載せる」の正しい意味

「バイオリンは左の肩に載せる」と説明されることが多いのですが、「肩に載せる」と聞くと多くの初心者が「肩の最も高いところ」に載せてしまいます。ちょうどお神輿を担ぐイメージです。これは正しくありません。

正しい「左の肩」とは「左の鎖骨」です。鎖骨に楽器を「載せる」というよりは「寄りかからせる」という表現が適切です。楽器は体に寄りかかっている状態なので、意外かもしれませんが楽器の表面は真上(天井のほう)ではなく正面を向いた状態になります。

①正しくない載せ方
バイオリンを左肩に載せいている人(誤った例)
肩の最も高いところに載せた状態(誤った例)
バイオリンを左肩の載せる人(誤った例)
正しくない載せ方では、楽器(肩当)が体から浮いています
②正しい載せ方
バイオリンを左肩に載せる人(正しい例)
正しく楽器を載せた状態
正しい載せ方では、楽器(肩当)は体に接地します。

2.楽器の正しい向き

ただ思い付きのまま楽器を鎖骨に寄りかからせても正しい持ち方にはなりません。正しい楽器の向きとは、楽器の先端(うずまき)が演奏者から見て10時方向に伸びている状態です。

楽器の先端(うずまき)が10時方向に正しく向いているときは、顎あてとうずまきはほぼ同じ高さにあります。

バイオリンの持ち方(向き)の解説図
楽器の向きは10時方向
バイオリンを顎で挟む女性(バイオリンの持ち方解説用)
正しく10時を向いているときは、顎あてとうずまきは同じ高さ

初心者は、楽器が10時方向ではなく11時に向いてしまうことがあります。楽器が109時方向にあると弦の上が見にくいため、つい見やすい11時方向に動かしてしまうのです。とくに低学年生以下の場合は理解が難しく、正しい位置よりも「自分にとって都合がいい」位置や持ち方を優先しがちです。保護者は確実に10時方向になるようチェックしてください。

楽器が11時方向を向くと、うずまきは顎あてよりも低い位置に下がります。この場合は正しい10時の位置を探してください。うずまきは顎あてと同じくらいの高さに上がります。

バイオリンを左肩に載せる人(正しい例)
正しい向き(10時方向)
バイオリンを左肩に載せる人(誤った例)
正しくない向き(11時方向)
バイオリンを左肩に載せる人(正しい例)
正しい向き(10時方向)うずまきの高さは顎あてと同じ
バイオリンを左肩に載せる人(誤った例)
正しくない向き(11時方向)うずまきが下に下がります

3.楽器と首の間に隙間はゼロ

楽器は首に押し当てて首と楽器の隙間をすべて埋めます。もっと言うと楽器を首に埋め込んでいるといっても過言ではありません。それくらいしっかり押し当てて隙間をふさぐ必要があります。

ところが、親が子どもの持ち方練習をサポートする場合は「押しあてたら痛いだろう」と思って首に押し当てずに隙間を残しがちです。しかし首元に隙間がある状態だと楽器を固定できません。首の横を手で押してみると分かるのですが、ちょっと押したぐらいで痛いことはありません。楽器をしっかり首に押し当てて隙間をなくしましょう。

バイオリンを左肩に載せる人(首元クローズアップ)
正しい持ち方では、首と楽器の間に隙間はありません

初心者が陥りがちなミス

ただ「楽器の正しい位置を探す」だけでも、初心者はなかなかうまくいきません。それにはいくつか理由があります。次の点に注意して楽器の正しい位置を探してみましょう。

1.姿勢が崩れる

「楽器の正しい位置を探す」というただそれだけの練習でも、だんだん姿勢が崩れてきます。初心者はまず「まっすぐ立つ」状態を持続できないからです。姿勢が崩れた状態では楽器の正しい位置は見つけられません。

楽器の正しい位置を探すときは、姿勢が崩れていないか逐一確認しましょう。姿勢の確認方法は「姿勢のチェックポイント~バイオリン未経験の親でも、その判断でOK」でも解説しているので参考にしてください。

2.すぐに顎で挟もうとする

バイオリンは顎で挟んで支える楽器だと分かると、楽器を肩(左の鎖骨)に載せてすぐ顎で挟もうとする人が多いのですが、楽器の正しい位置を探すときは挟もうとしてはダメです。「挟もう」として力をいれるとたいていの人が間違った形になります。

正しい位置を探すときは正しい位置を探すことだけに集中してください。このとき最も大事なのは姿勢を崩さないように維持することです。正しい姿勢で正しい楽器の位置を見つける必要があります。

 

 

バイオリンを顎で挟もうと頭を倒す子ども(誤った例)
楽器が正しい位置・向きに入らない理由がわかりますか?

初心者は、ただ「楽器の正しい位置を探す」というそれだけでも思うようにはかどりません。バイオリンの持ち方は正しくないイメージが普及しているため、初めて楽器を構える練習をしてみると、たいていの人が「想像したのと全然違った!」と驚きます。

正しい楽器の位置を知ることが正しい持ち方・良い音への第一歩。とくに小学校低学年生以下の年齢だと正しい位置の必要性もまだ理解できないので、保護者がしっかり確認しましょう。

バイオリンを演奏するリスのイラスト

「バイオリンをもっと身近に感じてほしい」の思いを持ったバイオリニストによる講師チーム。オンラインならではの教え方を工夫しています。日本国内だけでなく海外からもレッスン実施中。