しずかちゃんのバイオリンってどんな音?~初心者が良い音を出す練習法
- バイオリン・プロジェクト講師チーム
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しずかちゃんのバイオリンはどんな音?
子どもから大人まで幅広く人気のアニメ「ドラえもん」の登場人物「しずかちゃん」はバイオリンを嗜みます。が、その音はとても酷くて聞いていられない・・・という描写がされていますが、しずかちゃんの音ってどんな音でしょう?
しずかちゃんがバイオリンの初心者(または初心者の状態から上達していない)と仮定すると、それはたぶんガリガリした雑音またはカサカサと掠れた音、あるいはその両方だと思われます。これらは初心者が出すバイオリンの音の典型例です。
初心者のバイオリンの音は、弾き続けたら勝手に奇麗な音になるわけではありません。奇麗な音を出す練習をしないと、いつまでも音は良くなりません。しずかちゃんはきっと、この「奇麗な音を出す」練習をしていないのでしょう。
ここでは所謂「しずかちゃんの音」の原因と奇麗な音を出すための練習法を紹介します。
しずかちゃんの音は(たぶん)2種類の雑音
バイオリンの初心者が最初に出す(奇麗でない)音は主に2種類あります。ガリガリした雑音またはカサカサと掠れた音、あるいはその両方です。どちらの音も適正な弓圧をコントロールできていないことが原因です。
【しずかちゃんの音①】ガリガリ音
弦に対する弓の圧が強すぎるとガリガリという雑音が混じります。これは右腕から右手にかけて力が入りすぎていることが原因です。手に力が入りすぎると弓をグーで握ったり指を反らせて弓をつまんだり、弓の持ち方も崩れています。
ガリガリ音は弓の根元付近で出ます。右手が弦に近いほど弦に対して力を加えやすいからです。弓先でガリガリ音が出ることはあまりありません。右手が弦から離れると力を弦に対して力が加わりにくくなるからです。
ガリガリ音の原因は右腕や右手に力が入りすぎることなので腕全体を脱力させる必要があります。脱力と言うと力を抜いて弾く人が多いのですが、これは正しい脱力ではありません。力を抜いてしまったら、こんどは弓を正しくコントロールできません。
正しい脱力とは省エネで弾くことです。省エネで弾くには右腕の力を抜くのではなく、右肩全体を大きく使って弾きます。初心者の場合は肘から先だけを動かしていることがあるのですが、これでは右手は脱力できず、弓の軌道も正しくなりません。肩を使って弾けるようになると、力加減も弓の軌道も適切な状態を保てるようになります。
肩を使って弾く練習については「ピアノとバイオリンの共通点は「肩の使い方」」でも紹介しているので参考にしてください。
【しずかちゃんの音②】カサカサ音
ガリガリ音が混じる弾き方の場合、弓先の圧力は適度に保たれているためバイオリンらしい音が出ます。ところがバイオリンらしい音が全く響かずカサカサと草が擦れるような音だけが出ることがあります。これは弓が弦の上を滑って落ちていることが原因です。
弓が弦を引っ掻いて振動させることでバイオリンの音がつくられます。ところが弓の圧が弱く弦の上を滑っているだけだと、弓は弦を振動させることができず弓と弦の擦れる音だけがカサカサと聞こえます。
低学年生だと腕の力の使い方がよく分からず弓を滑らせているだけのことがあります。何度弾いても弓が弦の上を滑って落ちるので、この場合は保護者が、弓の重さを弦に載せながら一緒に弾いてみてください。弓で弦を押さえつけすぎると上述のガリガリ音になりますが、適切な力が加われば弦が振動してバイオリンの音が鳴ります。
カサカサ音を解消するには弦に対して適切な弓圧をかけることなのですが、この適正な弓圧が分からないためにカサカサ音が出ています。特に低年齢の場合は「奇麗な音はどんな音か」を知らずに弾いていることが多く、その場合は自分の音が悪いことに気づいていません。音が悪いと感じていなければ、音を良くしようと自ら工夫することもできません。なので、保護者が一緒に弓を動かして良い音を出して聞かせてあげてください。カサカサ音より良く響く音の方が奇麗だと分かることが、音質改善の最初の一歩です。
雑音をなくして良い音を出すための練習法
今の弾き方で弾き続けても音は改善しません。いつまでも雑音だけが鳴り続けます。音を良くするには音を良くするための練習が必要です。
①ガリガリ音、②カサカサ音のいずれも弦に対する弓圧が適正でないことが原因ですが、適正な弓圧をコントロールできるようになるには、正しいボーイング、肩を使ったボーイングができることが前提条件です。
初心者には正しいボーイングも難しく感じられますが、良い音を出すにはまず正しいボーイングができるよう練習しましょう。バイオリンを習い始めてすぐの頃は正しいボーイングの動きはとても不自然な動きに感じられるものです。普段の生活での筋肉の動かし方と違うからです。バイオリン演奏に必要な筋肉の動かし方に慣れてくると、腕は自然に脱力(省エネ)できるようになり、弓圧をコントロールできるようになります。
初心者のためのボーイング練習法は「ボーイング練習方法~バイオリン初心者が上達する簡単3ステップ」でも紹介しているので参考にしてください。
正しいボーイングとは
【弓と弦は直角に交わる】
弓と弦は直角に交わった状態で弾く
【姿勢】
弾きはじめ(元弓)と弾き下ろしたとき(弓先)とで姿勢が変わらない(崩れない)
【1本の弦だけ弾く】
1本の弦のだけを弾く(1つの音だけ鳴らす)
しずかちゃんは音程も外れているのかも・・・
雑音が鳴るだけでなく、しずかちゃんの演奏は音程が合っていないということも考えられます。音程が合っていないのはそもそも調弦が合っていないのか、調弦はできているけど左手の運指がおかしいのか・・・
【しずかちゃんの音③】調弦が正しくない
初心者(低学年生ならその保護者)は調弦に苦手意識を持つことも少なくありません。教室で先生に直してもらうから、家での調弦は中途半端、なんてことはありませんか?これではいつまでたっても調弦できないし正しい音も覚えられません。
調弦に慣れないうちは1本の弦の音を合わせるだけでも5分、10分と時間がかかるかもしれませんが、慣れてしまえば4本の弦は1分で調弦できるようになります。最初は面倒に思えますが、毎日調弦して音を正しく合わせてから練習しましょう。
調弦のやり方は「初心者のためのバイオリン調弦(チューニング)ガイド~最初に覚えるべき基本手順」でも紹介しているので参考にしてください。
【しずかちゃんの音④】左手の運指が正しくない
そもそも運指が正しくなければ正しい音は出ません。バイオリンは弦を押させる位置が少しずれただけで音もずれてしまいます。しずかちゃんは正しい位置を理解していないのかもしれません。
バイオリンにはギターのようなフレット(目印線)がないため、初心者は正しい押さえ位置を覚えるために目印テープを貼って練習するのが一般的です。しずかちゃんのバイオリンには目印線を貼っていないのかもしれません。
目印テープの位置や貼り方は「バイオリンにはフレットがない!初心者は目印テープを貼って練習しよう」でも紹介しているので参考にしてください。
【しずかちゃんの音⑤】左手が崩れている
初心者は弦を押さえることに集中してしまい、左手の形を意識していないことがあります。左手は崩れても弦を押さえられますが、素早い運指ができずテンポが遅れます。そもそも崩れた形では弦を押さえにくくなり、正しい場所を押さえたつもりでずれていることもあります。
左手の形を正しく作るには、まずバイオリンの持ち方が正しくできている必要があります。姿勢が崩れても左手は崩れます。そのうえで左手の形を意識して練習します。
左手の正しい形の作り方は「バイオリン左手の正しい形の作り方~初心者の簡単な練習法」でも紹介しているので参考にしてください。
しずかちゃんの練習に足りないものは?
しずかちゃんはいつまでたっても上達しないイメージですが、奇麗な音を出すことはそんなに難しいのでしょうか?適切な弓圧をコントロールできれば、練習次第では短期間で雑音は無くなります。毎日調弦していればやり方にも慣れるし、左手も練習すれば改善できます。が、しずかちゃんはもうずっと長いこと音が汚いようです。
もしかしたら、しずかちゃんは「今の音が奇麗でない」と思っていないかもしれません。だとしたら「奇麗な音・良い音を出そう」というモチベーションも起こりません。確かに低学年生だと「音が悪い」とはどういうことか、「音が良い」とはどういうことか、さらに正しい音程も理解していないことがあります。
この「今の音が奇麗でない」と認識することはとても大事です。同時に、奇麗な音はどんな音か、正しい音程はどんな音かを知ることも上達には欠かせない意識です。良い音、理想の音に近づくよう自分で音を作っていくのがバイオリンです。時間を消化するために惰性で練習しているだけでは音は良くなりません。
良い音、奇麗な音がどんな音か分からなかったら、YouTubeで「素敵だな」と思う演奏を鑑賞してみましょう。それが良い音の目標です。最初からプロのような音は出せませんが、雑音が無くよく響く音のイメージを持つことは良い音に近づける最初のステップです。
しずかちゃんは「今の音が良くない」と思わないだけでなく、奇麗な音や正しい音程がどんな音かを知らないのかもしれません。でも、しずかちゃんは小学4年生。奇麗な音と汚い音の違いは分かりそうなものです・・・
真相は分かりませんが、奇麗な音を出す練習をしていないことだけは確かでしょう。
音が汚いまま直りません・・・
練習は続けているけど音が悪い。奇麗な音が出ない。
それはきっと奇麗な音を出す練習ではないから。いちど基本を見直して奇麗な音を出す練習をしてみましょう。
分かってしまえばあとは毎日の継続。音を奇麗にする練習を試してみませんか?
「バイオリンをもっと身近に感じてほしい」の思いを持ったバイオリニストによる講師チーム。オンラインならではの教え方を工夫しています。日本国内だけでなく海外からもレッスン実施中。