ピアノとバイオリンのイラスト(モノクロ)

ピアノとバイオリン、どっちが習いやすい?

ピアノとバイオリン、「通いやすさ」「練習しやすさ」「楽器の購入」から考える

子どもに楽器を習わせたいと考えたとき、ピアノとバイオリンのどちらが良い?という疑問はよくあります。ここでは、それぞれの楽器の特徴を「通いやすさ」「練習のしやすさ」「楽器購入のしやすさ」の観点から比較します。

1.通いやすさ(続けやすさ)を考える

週に1回、または月に数回の通いを実現できるか?

子どもの習い事には送り迎えが必須です。近所の教室なら「行くときは子どもだけで出かけて帰りは親が迎えに行く」という工夫もできますが、多くの場合は往復を親が送迎します。

これは自宅から教室を往復する時間だけでなく、レッスンを待っている時間も含めて親は時間を作らなくてはいけません。レッスン時間の間に夕食の買い物を済ませることもできるかもしれませんが、多くの音楽レッスンの1コマは30分。買い物に出るには少し足りなさそうです。

だから、習い事をするなら教室の通いやすさは重要です。

教室に通って習うなら、ピアノが習いやすい

どんな小学校でもクラスに1人は「ピアノを弾ける」児童がいるものです。言い換えると、日本全国どこでもピアノ教室はあるのです。実際に住んでいる地域のもピアノ教室をGoogleで検索してみてください。「●●(地名) ピアノ教室」と検索すれば、必ず教室情報がヒットするはずです。大手の音楽教室から個人レッスンまで、選択肢が豊富で、通いやすさの面で優れています。

同じ地域で複数の教室があるなら、講師との相性や曜日・時間帯の都合も選べます。

一方で、バイオリン教室を見つけるのは簡単ではありません。バイオリン教室はほぼ都市部に限られてしまうため、郊外住まいだと教室がありません。都市部だからといって豊富なわけでもなく、実施は東京の23区でも「通えるバイオリン教室が無い」という悩みは少なくありません。

だから「ピアノとバイオリンのどっち?」と悩む前に、まず通える教室があるかどうかを確認してみましょう。「一番近いバイオリン教室は、自宅から車で1時間半」かもしれません。こうなると往復3時間に加えてレッスン時間を足した4時間程度が習い事の送迎に必要になり、継続という観点から現実的ではありません。

オンラインで習うなら、バイオリンがおすすめ

バイオリン教室はピアノ教室と比べると圧倒的に数が少なく、誰もが都合の良い教室を利用できるわけではありません。

この場合、オンライン教室に検討を広げると選べる選択肢がかなり多くなります。保護者の世代はオンラインで習い事をした経験がないので躊躇するかもしれませんが、そうすると教室が近くにない限り選択できないことになります。

コロナの流行をきっかけにオンラインレッスンを充実させる教室も増えています。教室の立地に関係なくレッスンを選べますし、オンラインの欠点と思われることは実は思わぬ利点だったりします。

実際「子どもがバイオリンに興味を持ったけど、自宅近くには教室がない」という理由で6週間レッスンに参加する親子は少なくありません。そしてそのままオンラインでバイオリンを継続しています。

バイオリンは持ち運びができる楽器なのでオンラインでもレッスンを受けやすいのです。Zoom画面に映る角度を自由に変えられます。

ピアノの場合は置いた場所に固定なのでオンライン画面でのレッスンが少し難しくなります。ピアノ経験者が補助的にオンラインレッスンを受けるのは問題ないのですが、基礎から学ぶには対面レッスンのほうが適しています。

2.練習のしやすさで考える

ピアノもバイオリンも、毎日の練習が必須

楽器の上達には継続した練習が欠かせません。ピアノもバイオリンも、一度習い始めたら毎日練習することが重要です。楽器の習い事が初めてなら「練習を習慣づける」ことが難しいので、毎日親が練習をみてあげる必要が出てきます。

ここで、親に同じ楽器の経験が必要と言ってしまうと、ピアノ経験がある親は割と多いのですが、バイオリン経験のある親は限られています。でも「親に経験がないからバイオリンの習い事は無理」と決めてしまわないでください。

親に経験が無くてもバイオリンは習える

バイオリンは、初心者のうちは高学年生でも1人では練習できません。保護者のサポートが必須です。このとき保護者に求められるのはバイオリン経験ではなく「一緒にバイオリンを学ぶ姿勢」です。子どもがバイオリン初めてなら、親も初めて。だから親も一緒に「サポートの仕方」を練習していきます。

ある程度上達してサポートが無くても練習できるようになれば親の手はさほどかかりませんが、低学年生や初心者のうちは親のサポートは必須です。この点はピアノと比べると親の負担がずいぶんと大きいです。

親がピアノ経験者だからといって、自宅練習の指導がうまいわけではない

ピアノに限らず言えることですが、経験があるからといって「ゼロからの初心者に教えるのが上手い」と言う保証はありません。むしろ、経験のある人は初心者が何に苦労するのか分からないことが多く、初心者が求める細部の説明を「なんとなく、こう」と省略してしまうことがあります。

親が「実は教えるのも得意」なら問題ありませんが、バイオリンと同様、家の練習で何に注意したらいいのか、子どもの癖や不得意は何かを一緒に学んで練習に落とし込む必要があります。この点は、経験者ほど軽視しがちですので気を付けましょう。

3.楽器購入の比較

楽器を習うには、楽器を用意する必要があります。多くの場合、楽器を購入しますが、バイオリンだとレンタルのサービスも豊富で「楽器のことはよくわからないから、最初はレンタルで始める」という人は少なくありません。

楽器をどう揃えるか、も習い事検討の要素なので、ここでは必要な楽器の揃え方を比較します。

ピアノの購入は(おそらく)1回だけ

住宅事情によっては電子ピアノを選択することもありますが、電子でも木製のピアノでも、基本的に88鍵のフルサイズのピアノを購入します。

電子から木製のピアノに買い替えたり、または音大受験することになりアップライトからグランドピアノに買い替える、という状況もあるかもしれませんが、そうでない限り基本的に最初に購入したピアノをずっと使い続けます。

ピアノ購入後のメンテナンスは毎年

電子楽器以外はどんな楽器でも定期的なメンテナンスが必要で、ピアノの場合は半年~1年ごとに調律を行います。

調律とは、ピアノの音を正しく調整することです。ピアノは弾いているうちに徐々に弦が緩んだりして音が狂っていきます。正しい音が出るよう定期的に直す必要があるのです。

調律は専門の調律師に依頼します。ピアノを購入した店で調律師さんを紹介してくれることが多いですが、自分で調律師を探しても構いません。

よほど乱暴な使い方をしない限り、ピアノが壊れることはそうそうないので、定期メンテナンスといえば調律のことになります。

バイオリンは何度もサイズが変わる

小学5、6年生ですでに身長が150㎝以上あるなら大人用のサイズ(フルサイズ)で始められるので楽器サイズの変更はありません。しかし1,2年生など体が小さいうちからバイオリンを始めると、成長に合わせて楽器のサイズを変える必要があります。バイオリンのサイズ展開については「子ども用バイオリンのサイズは何種類?選び方は?」でも紹介しているので参考にしてください。

楽器を何度か買い替える(またはレンタルのサイズを変える)必要があり、加えて「バイオリンは高額」というイメージが付きまとうため「バイオリンはお金持ちの習い事」「楽器だけで何百万円もかかる」と誤解されがちです。実際は、初心者用のモデルなら新品で5万円程度から、中古なら3万円程度から揃います。楽器だけで何百万円・・・というのは音大進学する人の話です。

バイオリンの購入については「初心者向けのバイオリン、お値段いくら?~予算と選び方のコツ」でも紹介しているので参考にしてください。

バイオリンのメンテナンスは毎日、消耗品の交換は数ヶ月ごと、あとは調子がわるくなったら都度

1.調弦(毎日)

ピアノの調律は年に1、2回でいいのですが、バイオリンの調律(バイオリンでは「調弦」と言います)は毎日です。これは自宅で自分で行います。バイオリンでもギターでも弦楽器を演奏するなら、毎日の調弦は必須です。ピアノの調律には専門の道具が要りますが、弦楽器の調弦は自分の手でできます。自分で調弦するので費用はかかりません。

2.消耗品(数ヶ月ごと)

バイオリンの弦と弓の毛は消耗品です。使用しているうちに切れたり緩んだりして使えなくなります。劣化した弦や弓毛は音が悪くなりますので、数カ月ごとに交換が必要です。ピアノと比べてメンテナンス頻度が高いため、これも「お金がかかる」というイメージを作り出しています。

3.その他の調整(必要に応じて)

バイオリンは良い音が出るよう繊細なバランスで成り立っています。ぱっと見に割れたとか傷がついたとか損傷があるわけでなくても、ちょっとバランスが崩れると音が悪くなります。音の響きが悪いと演奏も楽しくありません。何が悪いか分からなくても、楽器屋さんに相談してちょっと調整してもらうと音が格段に良くなることは珍しくありません。自動車の車検と同じように、バイオリンも定期的に調整して良い音を保ちます。

最初に大きな買い物をするか、買い替えながら上位を目指すか

ピアノを購入するなら安くても最初に数十万円の買い物をします。これをずっと使い続ける間、バイオリンはエントリーモデルを数万円で購入できます。初心者のうちは良い楽器を弾きこなす腕もなければ、小さい楽器は期待するほど音が響かないので、安く始めてもいいのです。バイオリンはその後サイズ交換があるのですが、上達してサイズが大きくなってからの楽器に予算を回せばいいのです。そうすると、楽器の購入費はピアノとさほど変わらないかもしれません。

ピアノでもバイオリンでも、上級者になれば上級者の腕にふさわしい楽器が欲しくなります。こうなると楽器は高額になりがちです。

重要なのは「納得する楽器」を買うことです。「高い楽器を買ってそれに見合うだけの技術を身に着けられるよう、しっかり練習する」でもいいし「最初は中古で始めて、楽器の違いが分かるようになってから上位モデルを考える」でもいいのです。バイオリンならレンタルのサービスも充実しているので「最初はレンタルで、次のサイズになったら購入を検討する」という人もいます。

まとめ

ピアノとバイオリン、それぞれに特徴があります。

  • 通いやすさを重視するなら、ピアノのほうが教室が多く通いやすい。

  • オンラインでの習得を考えるなら、バイオリンが適している。

  • 楽器の練習はどちらも毎日続ける必要があるが、親の関与が大きな影響を与える。

  • 楽器の準備に関しては、ピアノは一度購入すればサイズの変更は不要だが、バイオリンは成長に応じて買い替えが必要。

ピアノとバイオリンを並んだら、検討の材料にしてください。

ピアノとバイオリン、両方習うのはアリ?

ピアノとバイオリン、どちらも好きだから両方習っている人もいます。決して無理なことではありません。

ただし、ピアノとバイオリンを同時に習い始めるのではなく、どちらかを先に始めて、後からもう一方を始めたという例がほとんどです。ピアノ教室のほうが多いので、ピアノを先に習っていて弦楽器にも興味を持ってバイオリンを始めた、という例が多いのではないでしょうか。

楽器の習い事は毎日の練習が必須ですが、どちらかを先に習っていれば練習は習慣づいているので2つ目の楽器も始めやすいのです。「ピアノとバイオリンを両方習うのは無理じゃない!~音楽の幅が広がるメリット」でも事例を紹介しているので参考にしてください。

ただし、教室の送り迎えも増えてしまいます。もし2つの教室の送り迎えが大変だったり、ピアノは近所の教室があるけどバイオリンは教室がない、と言う場合にはバイオリンについてはオンラインレッスンを選択してみましょう。送り迎えの時間は必要ないし、教室がないからと諦めることもありません。

ピアノを習っていて「バイオリンも興味ある」というなら最初は「6週間バイオリン・レッスン」をお勧めします。

実際にピアノに加えてバイオリンを始めてみると、練習が増えて大変というより「バイオリンを弾くのが楽しい。弾くのは簡単ではないけど、良い音が出ると嬉しい」というポジティブな気持ちで取り組んでいる人がほとんどです。

ピアノに加えてバイオリンも長期的に続けていくのかは、6週間バイオリンを体験してから考えればいいのです。中には「バイオリンも続けたいけど、今はピアノに集中する」と優先順位をつけてより真剣にピアノに取り組むようになったという例もあります。

バイオリンを演奏するリスのイラスト

「バイオリンをもっと身近に感じてほしい」の思いを持ったバイオリニストによる講師チーム。オンラインならではの教え方を工夫しています。日本国内だけでなく海外からもレッスン実施中。