ボーイング練習方法~バイオリン初心者が上達する簡単3ステップ

ボーイング(ボウイング)とは

バイオリンの弓の動きをボーイング(またはボウイング|bowing)と言います。”bow”は「弓で弾く」という意味の単語です。初心者はボーイングがなかなかうまくできません。弓が指板のほうへ逸れてしまったり、A線を弾くはずがE線に触ってしまったり、1本の弦をまっすぐに弾くという単純な動きなのに正しい動きができません。

ボーイングはバイオリン演奏において重要な技術で、正しい練習を行うことで演奏の質が大きく向上します。ここでは、初心者でも取り組みやすいボーイングの基礎練習を紹介します。今日から日々の練習に取り入れてみましょう。

良いボーイング、悪いボーイング

良いボーイング

良いボーイングは、弓と弦が直角に交差した状態を維持して弓を動かします。常に弓の圧力が適切な状態なので、滑らかで均一な音を出せます。このとき腕の関節ではなく肩の筋肉を動かしているので、腕自体は脱力しています。

悪いボーイング

一方、悪いボーイングは、弓が弦に対して斜めに当たったり、弓を動かすときに不規則な圧力がかかってしまうことで、音がガサガサしたり不安定になります。初心者のうちは、不安定なボーイングに悩むことが多いですが、基礎練習をしっかり行えば早期に改善できます。

良いボーイングの例

黄線(弦)と水色線(弓)が直角に交差しています。

ボーイングの基礎練習

ボーイングが上達するには、まずは基本的な体(肩の筋肉)の使い方を理解し、腕の関節ではなく肩弓をコントロールする感覚を磨くことが大切です。以下の3つの練習を毎日少しずつ取り入れてみましょう。

1.肩の体操

バイオリンのボーイングは右肩の関節(腕の付け根)を動かすのではなく、右肩の筋肉(肩甲骨のあたり)を大きく動かすのが正しい動きです。弓が指板に逸れてしまうのは筋肉が正しく動いていないから。筋肉を正しく動かせるように、肩の体操から始めましょう。

1.両手を合わせて体の前に伸ばす

両肘を伸ばし、両手はおへその正面で合わせます。

2.右手だけ左手より3㎝前に伸ばす

このとき、左肩が後ろに下がりやすいので、左肩の位置を変えずに右手を伸ばします。左肩の位置を維持しようとすると両手の位置がおへその前ではなく右へ逸れるのですが、左肩の位置を維持したまま、かつ両手はおへその前で合わせた状態を維持したまま、右手を左手よ3センチ前に引っ張って(肩甲骨から押し出すイメージ)ください。
 
右の肩甲骨あたりの筋肉が引っ張られる(動いている)感覚があれば正解です。
次は左手を右手より3センチ前に出すよう、同じ動きをしてみましょう。

2.音を出さずに素振りの練習

肩の筋肉を動かせたら、次は音を出さずに正しいボーイングの形を作ります。スポーツに例えると「素振り」と同じです。バイオリンを弾きながらボーイングを直そうと思っても音の方が気になると弓の動きに集中できません。音は出さずに正しい形に集中して正しい形、正しい動きを覚えます。正しい動きを覚えられたらそのあとで音を出してみましょう。

1.弓元を弦に載せた状態で3秒静止

まずピタッと3秒止まります。このとき弓と弦が直角に交わっていることを確認してください。子どもの場合はここで体がグラグラすることがありますが、まっすぐ立つことを意識してグラグラを止めて必ず3秒静止しましょう。

2.弓先を弦に載せた状態で3秒静止

次に弓先を弦に載せた状態で3秒静止します。弓元からダウンボウで弾き下ろすのではなく、いったん弓を弦から離して弓先を弦に載せます。弓先を載せても弓と弦は直角に交わった状態を維持してください。

弓先を載せたとき、右肩の筋肉を動かせていないと姿勢が崩れます。崩れた姿勢はいちど正しく直して、正しい姿勢で3秒静止します。正しい姿勢を作るには、先の体操の「右手を左手より2センチ前に出す」ときと同じ筋肉の動かし方を意識してください。

弓先で3秒静止したらまた弓元を弦に載せ3秒静止し、これを繰り返します。最初は何度やっても弓先の姿勢が崩れるのですが、姿勢が崩れたまま静止するのではなく、崩れるたびに正しい形に直してから静止することが重要です。

正しい動きができていれば、弓元でも弓先でも姿勢は同じまま崩れません。弓元と弓先とで姿勢が違うなら、弓先の姿勢を正しく作れていない状態です。姿勢がグラつかずに弓元と弓先を移動できるよう練習しましょう。

3.弓元→弓の中央→弓先→弓の中央→弓元・・・を繰り返す

弓元から弓先に移動(いったん弓を離して載せかえる)する動きに慣れたら、今度は弓の中央を弦に載せる動きを加えます。弓の中央を弦に載せた時も弓と弦は直角に交差した状態を維持してください。

確実な姿勢を作ることが目的なので動きを急ぐ必要はありませんが、弓先の姿勢を直さなくてよいほど安定したら、弓元→中央→弓先・・・をリズムよく移動できるよう練習しましょう。これがボーイングの正しい軌道です。

3.ひとつの音をまっすぐ弾く練習

体操と素振りで体が正しいボーイングの動きに慣れたら、弓先の姿勢が崩れないように注意しながら、開放弦のA線(「ラ」の音)を弾いてみましょう。良い音を出すことよりも姿勢を崩さないことを意識して弾きます。筋肉の使い方に慣れてくれば弓圧の調整もできるようになるので、ここはいったん音を気にするのではなく、正しい姿勢を優先します。

スピードはできるだけゆっくり、弓がふらつかないようコントロールできる速さで弾きましょう。ボーイングが不安定な人がテンポ速く弾こうとすると、自転車に乗れない人が坂道を下るのと同じで、適切な軌道で弾けません。目安は、ゆっくり1,2,3,4と数えながら弾き下ろし、5,6,7,8で弾き上げる速度です。スピードを急ぐより確実な形を作ります。

まっすぐのボーイングができるようになったら、次は弓圧を調整して良い音を目指します。右肩から動かすことに慣れてきているので右腕の脱力もできるようになります。

上手く弾けないときは、姿勢と持ち方を確認

正しいボーイングができるようになるには、まず正しい持ち方と姿勢を維持する必要があります。初心者の場合、ボーイングの右腕に問題がある以前に姿勢が悪い、持ち方が悪いことがあります。

正しいボーイングがどうしてもできないと思う場合は、姿勢や持ち方を改めて確認してみましょう。下のページでも解説しているので参考にしてください。

バイオリン持ち方の基本(1)楽器の位置~初心者にありがちな間違い

姿勢のチェックポイント~バイオリン未経験の親でも、その判断でOK

姿勢と持ち方を改善するだけでボーイングも改善されることがあります。遠回りに思えるかもしれませんが、姿勢や持ち方が悪い場合はこちらを先に直したほうがボーイング改善の近道です。

何度やってもボーイングが曲がる

一人で練習を続けていると自己流の癖に気づかなかったり、正しいボーイングができているか不安になることもあります。そんな時は1回完結の単発レッスンを利用して専門家に客観的なアドバイスをもらうのが効果的です。オンラインなら自宅で受講できるので、いちど利用してみませんか?

バイオリンを演奏するリスのイラスト

「バイオリンをもっと身近に感じてほしい」の思いを持ったバイオリニストによる講師チーム。オンラインならではの教え方を工夫しています。日本国内だけでなく海外からもレッスン実施中。